契約の解消 契約をやめるときはより良い判断が必要です

●契約は守るべきもの
契約が成立した以上は、その効力を一方的に否定することはできません。契約は本来守るべきものだからです。それに、せっかく結んだ契約です。やめるのが本当に得策なのかを冷静に考えるべきです。しかし、どうしてもという場合は、次のようなことを参考にしてください。


法律の規定に基づいた解除

1.クーリング・オフ制度
●解除のできる場合
売主が業者の場合で、テント張りや仮設小屋での販売、押しかけ訪問販売など「事務所等」以外の場合で売買契約を結んだとします。その場合は、業者から次のページのような書面によりクーリング・オフ制度について告げられたその日から8日以内に限り、書面を発信すれば無条件で契約の解除ができます。

●解除のできない場合
物件の引渡しを受け、かつその代金を全部支払ってしまった場合は、クーリング・オフによる解除はできません。また、次の場所で契約した場合にもクーリング・オフによる解除はできません。
@業者の主たる事務所(本店)・従たる事務所(支店)
A継続的に業務を行うことができる施設を有する場所
B10区画以上の一団の宅地か10戸以上の一団の建物の分譲を行う案内所(ただしテント張り、仮設小屋であればクーリング・オフでやめられます)
C買主がその自宅か勤務先で売買契約に関する説明を受けることを申し出た場合はその場所

2.契約違反による解除
買主が代金を支払ったにもかかわらず、売主(業者)が物件の移転登記・引渡しをしてくれないような場合、買主は民法の定めに基づき、売主に履行を求める催告をした上で(または催告とともに)解除する旨を通知して契約を解除することができます。

3.瑕疵担保責任による解除
宅地として買った土地に家が建たないなど、物件に瑕疵があり、契約をした目的が達成できない場合に限り、買主は契約を解除できます。
業者が、クーリング・オフ制度について告げるときはつぎのような書面によることになっています。


手付放棄による解除

●手付放棄と倍返し
契約にあたって、買主から売主に対して手付が交付されると、その手付は原則として解約手付と解されます。売主または買主は、その相手方が契約の履行に着手するまでの間であれば、いつでも契約を解除することができます。例えば100万円の手付を払っている場合、買主はその100万円を放棄すれば契約を解除できますし、売主は受取った100万円と同額をプラスして200万円を買主に戻すことによって(手付損、手付倍返しの原則)契約の解除ができます。しかし、手付放棄により、結局多額の損害を被ることになりますので、契約するにあたっては物件を充分調査し、後日、安易に解約するといったことが起きないような慎重さが大切です。

●履行の着手があったときは解除できない
履行の着手とは、「客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合」とされており、相手方に履行の着手がある場合は手付放棄による契約の解除ができなくなります。履行の提供のための単なる前提行為は履行の準備行為と呼ばれ、履行の着手には該当しません。


話し合いによる契約の解除
前記の方法のどれにも当てはまらないような場合、合意解除という方法しかありません。買主が、いったん有効に成立した契約を解消して、契約がなかったのと同一の状態にすることを内容とする。新たな契約を売主との間で結ぶわけです。この合意解除は、まず相手が応じてくれるか、次いで、どういう内容で応じてくれるかなど、相手方との交渉次第ということになります。合意解除が成立したら、その内容を書面にしておきましょう。


錯誤・詐欺による取り消し等
さらに、契約の解消に関連して、錯誤(さくご)無効や詐欺による取り消しなどを主張できる場合があります。弁護士など法律の専門家によく相談してみましょう。