1.契約をするときの心がまえ

不動産の売買では、売主と買主が対等の立場で契約を締結します。したがって、いったん、契約書を作成すると、それ以降その取引は契約書の記載内容に従って進められ、将来、取引について紛争が生じたときも原則として契約書に基づいて解決されることになります。

●契約書は非常に大切なものです
不動産は買うにせよ売るにせよ、契約書の内容を十分確認しておかなければなりません。契約書をよく読んで意味のわからないこと、納得のいかないことが書いてあったら、納得できるまで聞いたり調べたりしてから契約しましょう。

●取引するために届出や許可が必要な場合があります
【国土利用計画法の届出】
一定の面積以上の土地の取引が行われた場合、その土地の権利を取得した者は、契約後2週間以内に市町村長を経由して都道府県知事に土地の利用目的や対価について届け出ることが義務づけられています。届出の対象となるのは、市街化調整区域などの場合は2,000u以上、市街化調整区域などの場合は5,000u以上の土地などです。また、これらの土地が注視区域(地価高騰のおそれのある場所等)に指定されている場合は、契約の両当事者は事前に知事に届け出なければなりません。知事は、届け出られた土地の利用目的に問題がある場合は助言や勧告することができます。

【農地転用の許可】
これまで農地として利用されてきた土地を、宅地などに転用する目的で取引する場合には、都道府県知事の許可が必要です。許可を受けずに取引すると、土地の所有権移転等の効力は生じず、現状回復などの是正措置命令がなされるほか、刑罰が適用されることがあります。許可を受けようとする者は、市町村の農業委員会を経由して知事に農地転用許可申請書を提出しなければなりません。なお、市街化区域内にある農地を転用し、権利を移動させるためには、あらかじめ農業委員会に転用の目的等を記載した届出書を提出する必要があります。


2.手付金等を支払うとき

売主が業者の場合で、手付金等の支払額が一定金額を超えるときは、保全措置を講じてもらう
業者が倒産して物件の引渡しが受けられないなどの不測の事態が発生したときでも、買主が支払った手付金等についてはその返還を受けることができるように、物件の売主業者に一定金額以上の手付金等を支払う場合には、保全措置を講じてもらいましょう。すなわち、売買代金の10%(造成工事や建築工事が未完成の場合は5%)または1,000万円を超える手付金等(契約日以降、物件引渡し前迄に支払う手付金のほか中間金等を含む)を支払う場合には、保証機関の発行した保証書を売主業者からもらってください。
保証書等の交付がないときは、手付金等の支払いを拒めます。
具体的な保全措置には、次の種類があります。どの措置をとってもらえるのか業者から説明してもらい確認しましょう。
@建設大臣の指定を受けた信用保証会社等が業者との保証委託契約に基づき保証するもの。
A保険会社が業者との保証保険契約に基づき保証するもの。
B業者と建設大臣が指定する指定保管機関との間で手付金等寄託契約を、また業者と買主との間で質権設定契約を結び、手付金を保全するもの。(工事完了物件の売買に限る)
なお、手付金等の額が上記の一定金額以下の場合や買主への所有権移転登記がされた場合は、保全措置の対象になりません。


契約時の留意点
悪い業者は、あなたに不利な契約内容であることを隠すためにいろいろな手口を使います。特に次のようなことに気をつけて、くれぐれも失敗のないようにしてください。

ハンは必ず自分で押すこと
「ハンを貸してください」といわれて渡したところ、自分の知らない書類をつくられ、大損させられた例もあります。

仮契約書、買付証明書、売渡承諾書は作らぬこと
「仮契約だから・・・」といわれて気軽にハンを押し、後で多額の違約金を要求されたという例もあります。

口約束はトラブルのもと
後で「言った」、「言わない」の水かけ論になります。大切な約束事は必ず書面にしましょう。

拇印や署名だけでも契約書は有効
「ハンを押さないのだから心配いりませんよ」といって、業者が拇印を押すようにとか署名をするようにと求めてきたので気軽に応じてしまい、後で違約金を請求された例もあります。

契約する時期は
造成工事や建築工事が完了していない宅地や建物の売買は、宅地造成の許可や建築確認などがあった後でなければ、契約してはならないことになっています。この許可や確認などを受けているかどうかをよく確かめてから契約しましょう。